我々は、ヒトの造血幹細胞とその娘細胞においては、サイクリン遺伝子ファミリーを介した細胞周期調節機構に違いがあると考えており、ヒトの造血幹細胞に特異的に発現する新たなサイクリン遺伝子のクローニングを試みた。Yeast系においてmother cellで主たる働きをするがdaughter cellでは重要な働きをしないと考えられるyeast CLN3のcDNAをプローブとしてヒト骨髄cDNAライブラリー(λgt10)をスクリーニングして数個の陽性クローンを得た。その後、これら陽性のファージクローンをpBleuscriptプラスミドベクターにサブクローニングした。さらにヒト骨髄血および抹梢血よりRNAを抽出し、上述の数個の陽性クローンを^<32>Pで標識しノーザンブロット解析を行ない、骨髄血にのみクローンについては、オートシークエンサー(ABI)で部分塩基配列を決定した。現在のところ最も解析の進んでいる、クローン♯1の予想されるアミノ酸配列の一部を(Fig1)に示した。クローン♯1は各種サイクリンに共通して存在するサイクリンボックスと考えられる構造を保持しており、既知のサイクリンと相同性をもっていることが明らかとなった。GeneBankでの検索の結果、このクローン♯1は骨髄細胞に発現する新規サイクリンの可能性が高いと考えられるが、その発現が造血幹細胞に限られているのかということを含め今後、各種細胞を用いクローン♯1の発現様式をさらに検討する予定である。 (Fig1) MRFVILSKSQFFFGPSI--NEVTQY-----DLRRSLH クローン♯1 MRFLIFDFIMYCHTRLNLSTSTLFLTFTILDKYSSRF CLN3 MRKIVATWMLEVCEEQKCEEEVFPLAMNYLDRFLSL サイクリンD
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