造血幹細胞が細胞周期G0/G1休止期からDNA合成に向かう際の細胞周期調節機構を解析することは血液細胞の増殖機構および幹細胞の自己複製機構を解析する上で非常に重要なことと考えられる。我々は細胞周期のG1期における代表的な細胞周期調節遺伝子であるサイクリンA遺伝子の発現調節機構の解析を行なう過程で、新規のサイクリン(クローン♯1)をクローニングした。クローン♯1は、yeastの系においてmother cellで主たる働きをするがdaughter cellでは重要な働きをしないと考えられるyeast CLN3のcDNAをプローブとしてヒト骨髄cDNAライブラリーをスクリーニングして得られたものである。クローン♯1は各種サイクリンに共通して存在するサイクリンボックスと考えられる構造を保持しており、既知のサイクリンと相同性をもつことが明らかとなった。さらに今回の研究では我々が新たにクローニングしたサイクリン遺伝子クローン♯1の血液細胞での細胞周期調節機構に果たす役割を解明することを目的とし各種白血病細胞株、ヒト正常骨髄血および末梢血よりRNAを単離しクローン♯1の発現様式を検討した。クローン♯1はstem cell leukemiaであるはHL-60やMDS由来の細胞株SKM-1では強く発現していたが、B cell leukemiaのDaudi cellではその発現は弱かった。一方、ヒト正常骨髄血では強く発現し、ヒト正常末梢血では発現が弱いことが確認された。さらに、SKM-1細胞の細胞周期を同調した後に採取したRNAを用いて解析した結果、クローン♯1はG1期に発現が誘導されることが明らかとなった。これらのことよりクローン♯1は未熟造血細胞に発現するG1サイクリンであることが明らかとなった。
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