研究概要 |
色素異常症の代表であるチロジナーゼ陰性型白皮症が、メラニン生成の律速酵素であるチロジナーゼの遺伝子変異によって生ずることが、最近富田らの研究により明らかにされた(Tomita et al.BBRC 164:990,1989)。その後、遺伝子工学の実験手法の利用により、チロジナーゼ以外に、メラニン生成に関与する蛋白の遺伝子が二つ発見された。つい最近になって、この二つの蛋白は、チロジナーゼ反応以降のメラニン合成経路の反応に関与する酵素dopa-chrome tautomeraseとDHICA oxidaseであることが明らかとなった。しかし現在この二つの酵素欠損によりどのような色素異常症が起こるのか明らかではない。本研究は、これら2つ酵素をはじめメラニン生成に関与する未知の蛋白の遺伝子変異により起こる色素異常症の検索と、その病態を明らかにすることにある。そこでこの1年間、様々な色素異常症の患者のリンパ球を収集し、それぞれの患者リンパ球から、染色体遺伝子を抽出し、すでにクローニングされている2つの酵素遺伝子をプローベに用いて、変異の発見に努めた。またlinkage anaalysisも行っている。検討中の症例の一つに遺伝性対側性色素異常症(遠山)の家系がある。遺伝性対側性色素異常症は手足の背側に点状ないし網状の色素斑、脱色素斑が混在する優性遺伝性疾患である。1923年に遠山によって初めて報告されて以来、未だその病因は明らかではない。最近図に示す本症の1家系を見い出し、現在この家系の遺伝子異常の検索を進めている。
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