ddYマウスの一部には生得的学習障害があり、この学習障害はIgGの糖鎖と関りがあること、及び学習障害のないマウスIgGの投与により学習障害が是正されることが判明している。そこで学習障害マウスの電撃ストレスによるニューロトランスミッター及びステロイドホルモンの変化とIgGの糖鎖構造の変化の関係を高速液クロとレクチンを用いて、ELISA法によって解析、及び投与されたIgGの糖鎖がいかなるメカニズムで脳機能に影響を与えるかの解析を行い、以下の成果を挙げた。 1.正常マウスと学習障害マウスの全血清中の糖鎖構造比は異なっていた。 2.特に、血脳関門と関連の深いルイス-X構造については、学習障害マウス-Xは正常マウスのそれと比べて、糖鎖修飾が著しかった。 3.一方、ヒト精神発達遅延者の一部にも学習障害マウスと同様なルイス-Xに対する糖鎖修飾がみられた。 4.ルイス-Xの機能から推量して、血小板由来成長因子-BB(PDGF-BB)が学習障害マウスの脳機能に直接影響するのではないかと考え、学習障害マウスにヒトPDGF-BBを投与した。PDGF-BBは用量依存的に学習障害マウスの学習能力を改善した。 なお、1.2.3は4との関連が未だ不明確である。しかし、この関連は糖鎖構造と脳機能の関係について、非常に重要な意味をもつものと思われる。 今後、より突っ込んだ研究が必要であり、かつその研究も進めている。
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