赤血球Ph抗原の薬物輸送系としての役割を解明するため、赤血球ゴ-ストを調製し、その薬物取り込み特性について検討した。 1.赤血球ゴ-ストの調製法について検討した結果、低張溶液で処理することにより赤血球内のヘモグロビンの大半がゴ-スト外に放出されることを認めた。しかしゴ-スト内の残存ヘモグロビン量は溶液のpHにより異なり、pHが低くなるほど残存量が増加する傾向を示した。この傾向は塩化ナトリウム溶液または塩化カリウム溶液のいずれを用いても同様であった。 2.赤血球ゴ-ストへの薬物取り込み特性ならびにD抗原の薬物輸送系への関与を明らかにするため、まずグルコースの移行特性について検討した。赤血球ゴ-ストの内側および外側のpHが等しい時、時間の経過と共にグルコースはメディウムからゴ-スト内に緩やかに移行した。しかし、ゴ-スト内側のpHを6.0/ゴ-スト外側のpHを7.4にして外向きのプロトン勾配を与えた時、ゴ-スト内へのグルコースの速やかな初期取り込みが観察された。この初期取り込みは、ナトリウム・グルコース共輸送系阻害剤であるフロレチンやナトリウムポンプの特異的阻害剤であるG-ストロファンチンでは阻害されず、また抗D抗体を作用させても抑制されなかったことから、赤血球ゴ-スト内へのグルコース移行にはナトリウム輸送系ならびにD抗原の関与は皆無であり、その一部はプロトン勾配により移行するものと推察された。
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