1)我々は肝動脈血栓症の成因の一つとして肝類洞内皮の傷害からくる肝微少循環の血流障害による肝動脈抵抗の増加が重要な役割を演じていると考えた。このため動物モデルの作成にあたっては雑種犬を用い、veno‐venous bypass下にTotal vascular exclusionを施行し、in situにてまず肝表面を氷にて1時間冷却(surface cooling)後、再潅流することで類洞内皮の傷害、ひいては肝動脈血栓症を起こしうると推測した。なお、この時肝臓の表面温の上昇及び全身の低体温を防ぐため肝臓の周囲には断熱剤を巻いた。その結果、このモデルでは肝動脈血栓症の指標となる肝動脈血流の有意な低下は得られなかった。このため、同じ条件下で門脈にカニュレーションし、これを4℃に冷却した乳酸加リンゲル氏液にて1時間潅流(core cooling)後、門脈血にて再潅流するモデルを新たに作成した。現在、このモデルで実験を進めているが、有意な結果が得られなかった場合、surface coolingとの併用や潅流液中に食道静脈瘤硬化剤であるEOを至適濃度で添加するなどの工夫をしていく予定である。 2)動物モデルの作成後は、肝虚血前から肝動脈より200U/kgのヘパリン、20ng/kg/minのPGE1を投与し、その予防効果を検討する。また、血栓症を作成したモデルに対しウロキナーゼ3000IU/kgやt‐PA0.5mg/kg(30万IU/kg)を投与し、治療効果を検討する。
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