転移性肝癌例においても原発性肝癌と同様にLipiodol ultrafluidの腫瘍内選択的停滞は認められるものの、その停滞量は肝細胞癌例に比して少なく、また停滞期間も短い、本科にて開発した、ターゲティング癌化学療法剤、SMANCS/Lipiodolのみでは転移性肝癌例の治療に際して、5生率は得られたものの充分満足できる成績とはなっていない。それゆえ、油性制癌剤1ml当りの抗腫瘍効果の増強を計ることが必要となった。 抗癌剤の中でニトロソウレア系からnitromin、アルカロイド系の中からVinblastineを選び、それぞれをLipiodol ultrafluidの中に種々の濃度で溶解したものを作製し、家兎VX2癌を肝に移植し、腫瘍の大きさが1〜2cmとなった時点で肝動脈からこれらの薬剤を0.2ml注入し、動注領域の正常肝組織に障害を与えることなく、腫瘍を完全壊死に陥らせる至適濃度の決定を行った。 非癌部に障害を与えることなく、nitromin/Lipiodolでは7.5mg/mlで、Vinblastine/Lipiodolでは5mg/mlの濃度のもので腫瘍完全壊死が認められた。Vinblastine/Lipiodolの7.5mg/ml、10mg/mlのものでは腫瘍完全壊死を示したのは当然であるが、これに加えて腫瘍周囲のそれぞれ1cm以下、1〜2cmの領域の肝実質のみに壊死が認められ、転移性肝癌治療に有用と考えられた。
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