Lipiodolの腫瘍内選択的停滞を利用したターゲティング癌化学療法において、肝細胞癌に対してはすでに本科にて開発し、市販されているSMANCS/Lipiodolにて大部分の症例に対応できた。実際に高い5生率とともに治癒例も多く経験されるようになってきている。しかしながら、Lipiodolの腫瘍内停滞量が少なく、また停滞期間も短い転移性肝癌例に対してはSMANCS/Lipiodolのみでは治療が困難な例も多く、油性制癌剤1ml当たりの抗腫瘍効果の増強を計るべく(SMANCS/Lipiodolでは懸濁液であるため1ml当たりの懸濁液を多くすると末梢血管レベルでの閉塞効果が強く出現し、非癌部にも影響が出現)、Lipiodol中への各種制癌剤の溶解、Solutionの開発を行い、それぞれの至適濃度の決定を試みた。家兎にてVX2癌を肝に移植し、腫瘍が1〜2cmとなった時点で肝動脈より各種油性制癌剤0.2mlの注入を行い抗腫瘍効果と動注領域非癌部への影響とを検討した。SMANCS/Lipiodolでは20%程度にしか得られなかった腫瘍完全壊死が動注非癌部領域に何んらの障害を与えることなく、epirubicin/Lipiodolでは5mg/mlで、nitromin/Lipiodolでは7.5mg/mlで、Vinblastine/Lipiodolでは5mg/mlで、ほぼ100%に得られた。 特記すべきはVinblastine/Lipiodolでは7.5mg/ml、10mg/mlで腫瘍完全壊死は当然として、これに加えて腫瘍からの距離、それぞれ1cm以下、1〜2cmと腫瘍周囲の肝組織をも壊死に陥らせることが判明し、目的とした転移性肝癌の治療に最も有用ではないかと考えられた。
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