現在一般に使用されているモノクローナル抗体はマウス由来であるため、ヒトに投与した場合異種反応が避けられない。そこでこの欠点を克服するために、マウス抗体を遺伝子工学技術でヒト型に変換したキメラ抗体に、抗癌剤ネオカルチノスタチンを結合させたch-A7-NCSを作成した。今回はch-A7-NCSがヒト胃癌に有効か、また胃癌腹膜播種治療に応用可能かどうかを検討した。 1ヒト胃癌をヌードマウスの背部に移植し、これを用いてch-A7-NCSの腫瘍集積性、腫瘍増殖抑制効果を検討した。 腫瘍集積性は、ヨードラベルした抗体、抗癌剤NCSの腫瘍内濃度を計測することで測定した。ch-A7-NCSは抗体、抗癌剤共に胃癌組織に高く、しかも特異的に集積した。 腫瘍増殖抑制効果はヌードマウスにヒト胃癌細胞を移植し、これにch-A7-NCSを投与し、腫瘍の経時的な大きさを計測することで検討した。ch-A7-NCSはヒト胃癌腫瘍の増殖を著明に抑制した。 2ヒト胃癌をヌードマウスの腹腔内に移植、腹膜播種モデルを完成した。このモデルを用いて、ch-A7-NCSの播種した腫瘍への集積性、増殖抑制効果を検討した。 ch-A7-NCSは腹膜播種腫瘍に長くかつ多量に集積し、また腹腔内での腫瘍増殖を著明に抑制した。 以上の結果は、ch-A7-NCSは根治不能と考えられる胃癌の腹膜播種治療の優れた剤型であると考えられ、今後ヒトへの応用での成果が期待できる。
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