研究課題/領域番号 |
06807106
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
馬庭 芳朗 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50229598)
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研究分担者 |
村上 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60244737)
瀧藤 克也 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (00254540)
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キーワード | ジグリセリド / エマルション / 脂肪乳剤 / 肝脂質代謝 / 経腸栄養 |
研究概要 |
従来の大豆油を用いた市販の脂肪乳剤こ較べて、(1)体内代謝が極めて迅速であると同時に、(2)現在基礎的研究が行われている中鎖脂肪(MCT)の欠点を克服し、(3)必須脂肪酸も供給できる新しい栄養モジュールとして、本年度は、位置特異性リパーゼを用いる酵素法により純度95%のジオレインおよび大豆油構成脂肪酸組成からなるジグリセリドを合成し、液晶乳化法を応用して、従来の脂肪乳剤よりも粒子径の微細な安定性の高いエマルションを生成することに成功した。これを駆使応用し、 1)作成したジグリセリドエマルションの静注後の体内代謝は、従来の脂肪乳剤や開発中のMCT乳剤と比較しても極めて迅速であり、静注5分ですでに5mEq/L以上の遊離脂肪酸を放出し、血清中性脂肪も静注30分後にはすでに静注前値にまで回復した。 2)静注後の肝での脂質代謝を透過電子顕微鏡を用いて形態学的に検討した結果、投与されたジグリセリドエマルション粒子は肝類洞内皮細胞小孔を通過し肝実質細胞に取り込まれ、静注5分後で直ちに脂質終末代謝像である液胞に変化していた。また、類洞中のKupffer細胞にはエマルション粒子は全く取り込まれず、形態学的にも血中および肝細胞中の代謝が迅速で、かつ網内系の栓塞は皆無であることが証明できた。 3)ジグリセリドエマルションは、経腸投与であっても消化吸収が迅速であり、トリグリセリド製剤で投与60分後に認められたカイロミクロンの上昇のピークが、ジグリセリドでは10分後という極めて早い時期にすでに観察された。ジグリセリドは経腸投与後、小腸で再合成されたトリグリセリドがカイロミクロンとHDLの2つのリポ蛋白粒子に配分されて血中に移行する吸収特性があることを初めて明らかにすることができた。 このように、ジグリセリドは、静脈内投与でも経腸投与でも体内代謝は迅速であり、従来の脂肪乳剤の使用限界を超えた臨床栄養学的有用性を期待できることを基礎的に解明できた。
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