研究概要 |
悪性脳腫瘍に対する腫瘍ワクチン療法の開発を目的に研究した。我々は既に、25種類のサイトカインや接着分子を発現する組み換えレトロウイルス・ベクターの産生細胞を作製、樹立し、これを用いてマウス腫瘍細胞に対して高効率の遺伝子導入を実現している。サイトカイン遺伝子導入細胞にX線を照射した上で、これを腫瘍ワクチンとして用い、個々のサイトカインの抗腫瘍効果をB16メラノーマ皮下腫瘍モデルで比較、検討したところ、GM-CSFが最も有効であった。次に、B16移植脳内腫瘍モデルで、2種類のサイトカインを発現するワクチンにより、効果の増強が得られるかどうかを検討した。その結果、GM-CSFにIL-Rを併用した場合に、GM-CSF単独を上回る強い腫瘍免疫が誘導できることを見いだした。その効果はB16を脳に移植後、3日目の腫瘍ワクチン投与においても認められ、治療的な効果が示された。in vivo depletion試験の結果、CD4+,CD8+,asialoGM1+細胞がエフェクター細胞として必要であることがわかった。GM-CSF+IL-4発現腫瘍ワクチンの組織学的な検討では、ワクチン接種部位に著しい炎症細胞浸潤を認めただけでなく、脳の腫瘍移植部位においても、コントロールと比較して有意に多い免疫細胞の腫瘍内浸潤が認められた。これらの結果は、GM-CSF+IL-4発現腫瘍ワクチン接種による全身的な抗腫瘍免疫の誘導、増強が、脳腫瘍に対しても有力な治療手段となる可能性を示すものである。
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