研究概要 |
申請者は悪性グリオーマに於けるTIL TCR repertoireをRT-PCR法により検索し、limited heterogenityとVα7,とVβ13.1のpredominant usageを立証した(Nitta T,Science:249:672,'90,Ebato M,Immunol Lett 39:53'94)。本実験ではこれらのサブクローンのV-J-D-Cの塩基配列を検索することでTILの抗原特異性を検討した。悪性グリオーマ12症例より抽出、合成したcDNAをVDJC領域のPCR増幅を行い、酸素処理後、Bluescriptvector、TG1,XL1-bluをcompetentcellとしてtransformationを施行した。得られたコロニーからアルカリ法によりplasmidを抽出、dideoxy法によりシークエンスを行った。Vβ13.1+TILのNDβ領域で、YRLPWGTSDSの共通配列が見られた。PBL由来Vβ13.1+T細胞に於けるTCRではTILで認められた共通配列を示す例は少なかった。Vβ3,Vβ5.1ではJC領域のみに共通配列があるもTILのVβ13.1のJC領域とも異なっていた。以上の所見よりグリオーマ特異的T細胞であることが強く示唆された。異なる悪性グリオーマ患者間に、共通塩基構造を有するT細胞が存在することは、腫瘍内におけるTILのclonalityが明かになるとともにグリオーマ特異抗原の存在が考えられる。特異抗原に対するキラーT細胞を誘導するか、もしくはこの共通塩基部のcDNA各グリオーマ患者の非刺激Tリンパ球に遺伝子導入して自己腫瘍細胞に特異的キラー活性を誘導することで、悪性グリオーマに対する特異的免疫遺伝子治療が可能となると思われる。
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