研究概要 |
軟骨細胞は、特有の細胞外基質を合成、分泌し、肥大化する。この過程は様々なホルモン、増殖因子により調節をうけ、軟骨細胞自身もこれらの因子およびその受容体を発現していることが初代培養細胞を用いた研究より明らかになってきた。そこで、軟骨形成や分化を抑制する遺伝子を解明するために株化細胞の樹立が必要不可欠となってきた。申請者はすでにSimian Virus 40 Large T-antigene geneを導入したトランジェニックマウスの骨端より軟骨細胞の初代培養を開始していた。今年度ははじめに低濃度血清存在下(0.5%)、33℃にて培養した際に、さかんに増殖しかつ安定して継代できる軟骨細胞様株化細胞TC-1,TC-6を樹立した。軟骨細胞は、長期培養により結節を形成する、トルイジンブルー染色によりメタクロマジ-を呈する、アルシアンブルー染色陽性であるなど他の細胞にない形態学的特徴を持っている。多角形を示すTC-1,TC-6細胞は双方とも長期培養により結節を形成し、上記の特徴をすべて備えていることがわかった。軟骨細胞は多量の細胞外基質に囲まれ、その基質の主構成成分は軟骨特有のタンパクであることが知られている。TC-1ならびにTC-6細胞は軟骨同様II型コラーゲン、軟骨型プロテオグリカンコアータンパクおよびリンクタンパクのメッセージを発現していることがノーザンブロット法により明かとなった。また、長期培養によりリンクタンパクやオステオポンチンの発現量が自動的に増加することもわかった。さらに、軟骨の初代培養細胞と同様にデキサメサゾン、線維芽細胞増殖因子などのホルモンや増殖因子に応答することからこれらの受容体を持つことが示唆された。以上、TC1およびTC6細胞は軟骨細胞の多くの分化形質を発現することから、今後種々の研究に応用できる株化細胞を樹立できたものと考えている。
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