研究概要 |
末梢神経の損傷に伴い生ずるSchwann細胞の増殖に関して免疫組織化学的、生化学的検討を行い、また、神経延長法を用いることでwaller変性に陥った神経管の延長の可能性と、そのメカニズムを明らかにした。 1、神経損傷後のSchwann細胞増殖におけるpolyamineの役割に関してラット坐骨神経を切断し、神経損傷前後での損傷末梢側でのornithine decarboxylase(ポリアミン類合成における最初の産物であるputresin産生の律速酵素)の活性の推移を調べ、proliferating nuclear antigen,S-100抗体を用いた免疫組織化学的検討により確認した分裂期にあるSchwann細胞の推移と対比することによりポリアミン類の合成がSchwann細胞数の増殖に深く関わることを明らかとした。 2、waller変性に陥った神経管の延長に関して ラット坐骨神経圧座モデルを用いwaller変性に陥った神経管の延長を試み、機能検査と組織学的検討を通じて、waller変性に陥った神経管であってもSchwann細胞の急速な増殖を伴いつつ神経延長が可能であることが示され、また機能回復がこの神経延長という侵襲により損なわれることがほとんどないことが示された。更に神経延長におけるSchwann細胞の増殖においてもポリアミンが重要な役割をなし、神経管内ポリアミン濃度が神経延長後に増加しなくなる神経損傷後3週に至るとSchwann細胞の増殖も誘発されなくなることも明らかとなった。 3、今後の展望 現在はシリコンチャンバーを用いた実験により神経損傷後のSchwann細胞の増殖、遊走に関わるメカニズムを明らかにし、また、得られた知見をフィードバックしてSchwann細胞の急速大量培養法開発に挑むべく実験を行っている。
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