研究概要 |
1) 1992年4月から1996年2月現在までの自家及び凍結同種表皮移植例は、158例となった。その内訳は自家培養表皮移植例37例、凍結同種培養移植例が121例である。治療の対象は新鮮熱傷、熱傷後瘢痕拘縮、難治性慢性潰瘍であった。 2)凍結同種培養表皮の凍結保存は100例となり全例-180℃の凍結庫へ保存した。うち50例の保存サンプルについてDNAを純化抽出し、PCR-RFLP法を用いたHLA抗原遺伝子のパターンによるHLAのタイピングを行った。 3)凍結同種培養表皮移植後の組織片のDNAを抽出し、HLAのパターンによるdonorの生着期間、recipientに置き換わる時期を判定した結果は、最長4カ月の生着を確認した。 4)同種培養表皮の保存法は、(1)段階的凍結法(-4℃→-20℃→-80℃→-135℃)(2)プログラミングフリーザ-による凍結法に加えて、(3)簡易法(-80℃ overnight→-135℃)を行ったところ、1年以上の保存でも約80%のviabilityが得られた。この方法を用いることで凍結同種培養表皮は簡便に臨床応用が可能となった。 本研究の結果から、凍結同種培養表皮は凍結保存できるので、緊急時の熱傷の治療にも有用であると考えられた。また将来的にはHLA DR (class II)のタイピングを合わせて移植できればさらに、凍結同種培養表皮の移植率は向上すると思われる。 本研究で培養もしくは凍結保存したサンプルは全例、感染症virus (HIV, HC, HB, ATLA)の検査を実施しており、安全性の確認を行ってきた。今後もこの方針を続けていく所存である。
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