臨床的に膀胱移植を確立するためには1)技術的な問題、2)生着率の問題、3)機能的な問題、4)拒絶反応の問題、5)免疫制御剤の影響に対する問題を解決しなければ成し遂げることはできない。そこで我々は次のような実験系を組み系統的に全膀胱移植の検討を試みた。 A.膀胱移植モデル(ラット)の作成 まず、ラット(ドナー)より膀胱を摘出する。方法は大動脈、下大静脈の枝を膀胱支配血管のみを残して剥離結紮し、腎動脈、腎静脈分岐部より遠位で結紮切断する。また尿道、尿管も切断し、膀胱・前立腺・精嚢線・大動脈・下大静脈を一塊として摘出する。レシピエントの大動脈・下大静脈とドナーの大動脈・下大静脈とをそれぞれ端側吻合する。レシピエントの尿道とドナーの膀胱とを吻合する。以上より作成したモデルの組織学的検討を術後1週、5週、6ケ月で行い、上皮の再生、神経繊維の再生が認められた。 なお、我々は基礎実験および平成6年度の実験において同系間移植モデルの作成法を確立しているがより臨床的検討を考慮できるモデルにするため吻合方法の多少の改良を行った。またモデル作成には手術用顕微鏡OLYMPUS-OME(現有設備)を使用した。 B.異系間膀胱移植モデル(ラット)の作成 Aと同様の作成方法で異系間(Donor:Brown Norwayラット、Recipient:Lewisラット)で膀胱移植を行った。その結果免疫抑制剤を使用しなければ7〜10日後に死亡することがわかり組織学的にも拒絶反応の像が認められた。また免疫抑制剤を使用した場合1カ月以上の生存を認めた。
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