研究概要 |
平成7年度に得られた実験結果を研究研究計画書(継続)に記載した実験方法の順に報告する。 1.cAMPのAFP産生に対する影響。:KU-MT細胞の培養系にForskolin(4x10^<-6>M)とコレラトキシン(CT,1ng/ml)を加えて各々1時間と3時間培養した後、細胞内のcAMP濃度(pmol/10^5)をRIA法により測定したところ、コントロール群の約40〜80倍に増加した。各濃度のForskolin(4x10^<-8>〜4x10^<-6>M),CT(0.01〜10ng/ml)とジブチルcAMP(5x10^<-6>〜5x10^<-4>M)を同細胞と3日間混合培養し9日目の培養上清中のAFP値をラテックス凝集反応を利用したCIA法により測定した。これら3種の薬剤はいずれも、その濃度に比例してAFP産生を増強させるとともに細胞増殖を抑制した。2.cAMPの細胞周期に与える影響。:実験1.で得られたoptimal doseの各薬剤と培養した後、フローサイトメトリー法を用いてbromodeoxyuridineの取り込みを測定したところ、明らかに低下しており、S期細胞の割合の低下によりKU-MTの細胞増殖が抑制された。3.cAMPによるAFPのmRNAの推移。:培養液中のAFPのbiosynthesisの増加をノザーンプロット法により測定した。コントロール細胞とともにPolyAセレクションにより得られたAFPのmRNAはこれらのcAMP刺激物質によりup-regulateをした。4.レチノイン酸(RA)とcAMP刺激物質の併用効果。mRNAレベルにおけるRAとこれらの薬剤の単独および併用時の変化を求めたが、併用群は単独群に比して明らかに高く、相乗効果と思えるAFPのinductionが認められた。以上の結果より清巣腫瘍の増殖・分化においてRAと同様にcAMPは極めて重要であり、今後の清巣腫瘍の治療に際してあらかじめcAMPを集積させることによりRAの副作用が軽減されることが示唆された。
|