研究概要 |
本研究において我々は、AMDは移植後3日目より物理化学的現象によって起こることを明らかにした。さらに形態学的解析によりその石灰化の形態はコラーゲンの束の形態によって決まることを明らかにした。つまり、コラーゲン性の石灰化はコラーゲンの太い束が明瞭に残存するのに対して、球状石灰化の場合はコラーゲンの形態が不明瞭で、束は細く、方向性も一定しないことが明らかになった。また、歯胚の脱灰象牙質においてもまったく同様に、石灰化の形態とコラーゲンの形態との相関関係が明らかになった。しかも、象牙前室では石灰化が認められず、類骨や象牙前室のような非石灰化層の基質は石灰化層の基質とは、物理化学的石灰化に対して異なった反応を示すことが実験的に明らかとなった。これらのことを考慮して硬組織形成機構としてのMatrix Transforming Theoryを提唱する。この理論により類骨や象牙前質の様な非石灰化組織の存在意義が明らかになった。この結果については、第99回日本解剖学会総会、The 3rd World Congress for Oral Implantlogy、歯科基礎医学会賞受賞講演、International Association for Dental Research、第37回歯科基礎医学会総会にて報告し、現在論文投稿準備中である。さらに現在、このAMDの形成を抑制する類骨や象牙前質中の蛋白質の探索を行っている。また、op/opマウスに関しては、全身の骨格標本の計測および組織学的観察から、膜性骨化よりも軟骨内骨化が強く抑制されていることが明らかになった。特に、肥大軟骨から骨芽細胞への変換と骨芽細胞の分化が著しく阻害されていた。さらに、軟骨基質に由来する特殊な石灰化過程が存在することが明らかになった。この結果はDentistry in Japan,Vol.32,3-8,1995にて発表し、第100回日本解剖学会にて報告している。現在、微細構造学的にこれらの点について検討を行っている。
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