研究概要 |
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の血液を健常人の唾液にて濃度勾配を持たせ、希釈することにより,検体モデルを作成した。そしてこの検体を血液に準じたPCR法にかけることによりHIVのDNAすなわちプロウイルスの検出を試みた。その結果、本法により唾液中よりプロウイルスの検出が可能であることが示された。現在はHIV感染者から採取した唾液をPCRにて解析しつつあり、無症候性キャリヤ-ではプロウイルスの検出は低いものの、HIV感染者が進行した被験者の唾液中には、プロウイルスが存在することが証明された。 唾液によるHIV感染の可能性を判断するためには、唾液自体に含まれるウイルスを中和する物質の存在についての検討も必要と考えられる。そこで唾液中に含まれる分泌型IgA量の測定をELISA法により行った。その結果、無症候性キャリヤ-ではHIV非感染者とはy445有意差はみられなかったが、CD4陽性リンパ球数が200/μ1未満に減少した。いわゆるAIDS患者では唾液中の分泌型IgA濃度が顕著に低下していることが明らかとなった。 以上の研究より、HIV感染者の中でもAIDS状態の患者では、唾液自体が感染の媒体となりうることが示唆された。しかしながら、対象症例が少なく、また血友病患者を対象としているため自然出血による影響も考えられる。また。血液中のウイルス量との比較により現実的に唾液が感染源となるのか検討が必要であると考えられた。
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