研究概要 |
ホスホリパーゼA_2を模倣した触媒抗体の作成について、C10の炭素鎖を有する遷移状態アナログを用いその抗体産生を検討したところ、ハプテンが生体膜リン脂質類似構造を有するにも関わらず免疫システムが作動し、細胞膜構造に動的影響を与える触媒抗体の作成が可能であることが明らかとなった。触媒抗体7B3(Km=347μM,Vmax=2.52μM/min,kcat=0.126min^<-1>,Ki=449μM)について種々の基質に対する分子認識と加水分解反応における作用メカニズムについて以下のごとく検討した。 1.触媒抗体の基質に対する分子認識とその反応性ーリン脂質のグリセロールにおける1および2位に存在する炭素鎖の長さ、3位に存在するホスホリルコリンのリン酸エステルおよびトリメチルアンモニウムの各電荷状態の4点における分子認識を行い、加水分解反応を触媒している事が明らかとなった。 一方、C16の炭素鎖を有するハプテンより作成した単クローン抗体の反応性は、基質の炭素鎖が長くなる程加水分解活性が低下する。さらに2種の基質共存下における抗体の反応性の低下が全く同程度である事より、先に示した基質の4点の認識がグリセロール3位のホスホリルコリン→2位のリン酸部→2および1位の炭素鎖の順に起こるものと考えられる。 2.触媒抗体の基質の光学異性体に対する選択性-光学活性な基質を合成し、D-およびL-体について反応性を検討したところ、特異的なL-体の分子認識を厳密に行い加水分解反応が進行している事が明らかとなった。 3.触媒抗体の基質によって形成される種々のリポゾームにおける単分子と分子集合体との反応性-7B3は単分子および分子集合体に対する触媒活性の比較から、二重膜構造を有するリン脂質よりも単分子状態のものを認識し加水分解反応を触媒している事が明らかとなった。
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