B型肝炎ウイルスに対するアンチセンス療法を検討する目的でトランスジェニックマウスとB型肝炎ウイルス産生細胞を用いて実験を行なった。まず、数年前より行なっているトランスジェニックマウスを用いた実験では、挿入されたHBx遺伝子の翻訳開始部位に対するヌクレアーゼ低抗性のフォスフォロサイオエイトDNAアンチセンスで以前のプロトコール(15週生日より1週間毎日投与)と変更して行なった(第2週から漸増して第10週まで週3回投与)。アンチセンスを投与したマウス13匹中10匹に肝臓前癌組織変化がほぼ消失し、13匹中の3匹をランダムに選択し、検討した肝臓でのHBxmRNA量とBrdU取り込みは共に著明に低下しておりアンチセンスの効果を裏付けた。センス投与3匹、生理食塩水投与群5匹では今までにHBxトランジェニックマウスで報告されている前癌組織変化(空胞変性及びPAS陽性細胞)が認められた。 B型肝炎ウイルス産生細胞を用いた実験系の確立はウイルス検出法が複雑であり、産生量が検出感度に比較してそれほど多くなく検出に安定性が乏しく、更に実験系を工夫して特異性と感受性を増すことが必要である。今後の検討としては、実験に用いる細胞数の検討、培養上清のみでなく細胞内のウイルスDNAを発光を用いて定量するなどを検討する予定である。
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