研究概要 |
●ポリアミン欠乏状態にしたHTC細胞にスペルミジンを投与して観察される細胞死を電子顕微鏡で観察したところ,細胞の縮小,核の凝縮,細胞表面の平滑化などアポトーシスに類似したものであることが示唆された.しかし,この細胞死にDNAの断片化は伴わず,新たな蛋白合成は必要としなかった. また,ポリアミン欠乏細胞のスペルミジンの取り込み能を比較したところ,ポリアミンの欠乏により取り込みの能は増加するが必ずしも過剰蓄積とは相関しないことが示唆された. ●細胞死を引き起こすスペルミジンアナログを検索するため,N-アルキル置換のポリアミンを系統的に合成した.一部のアナログを用いてスペルミジンの効果と比較したところこの細胞死は構造特異的に起こることが明らかになった.また,96穴プラスチックプレートを用いるスクリーニング系を確立するためMTTあるいはXTTを用いる基礎検討を行った. ●ポリアミンを細胞内に蓄積させる化合物として両端のアミノ基をアセチル化したジアセチルポリアミンを9種合成した.ラット肝臓から部分精製したポリアミン酸化酵素に対する合成アナログの基質性を調べ,アセタミドプロピル基を持つものが効率よく対応するポリアミンに変換されることを確認した.さらに,ポリアミン欠乏状態にしたHTC細胞に,これらアナログが取り込まれ,ポリアミンを生成することを確認し,これらアナログ体がポリアミンのプロドラッグとなり得ることを明らかにした.
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