原因不明だが、細胞内にリソソーム由来と考えられる封入体が認められる病気や変性疾患でリソソーム酵素の関与を思わせる疾患は多い。疾患は異なってもリソソームの酵素異常であれば、原因欠損酵素は変異によりレセプター結合能を失っていることが考えられる。そこで、レセプターの用いて変異タンパクの同定が可能かを今年度は検討した。牛肝臓よりマンノース6リン酸レセプターを精製を試みた。しかし、この材料では、今回の研究に十分な量のレセプターを得ることができなかった。そこで、牛胎児肝臓を材料に精製をおこない、十分量のレセプターを得ることができた。胎児肝は、マンノース6リン酸レセプターが多く発現している臓器であると考えられ、今後のレセプターの供給源として有用であることが示された。また数種のGM1ガングリオシドーシス患者変異遺伝子タンパクを検討して、本研究方法が変異タンパクの同定に有効であるかを検討した。多くの患者変異タンパクは分泌タンパクとして分泌しなかった。また頻度的に多い成人型の変異タンパクは分泌されるがリン酸化されない変異遺伝子であった。これは、レセプターを用いた変異遺伝子の同定が可能であることをしめす。しかし、モルキオB病と日本人幼児型変異遺伝子では前駆体は分泌タンパクはリン酸化されており、今回の研究システムでは、変異タンパクの同定はできないことも分かった。以上より、遺伝子変異を起こしている他の異常リソソームタンパクにおいてもレセプターとの結合能を失う可能性が高いことが考えられ、今回の検索方法で変異タンパクの同定が同定される可能であること思われた。しかし、同じ疾患であっても遺伝子変異によっては、今回の方法では変異タンパクの同定ができない例もあることがわかり、複数の症例を検討する必要があると考えられた。
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