研究概要 |
われわれは,特異性が高く簡便な測定法であるHPLC-PAD法を用いて,糖尿病性合併症の発症・進展に関与していると考えられる糖およびポリオール一斉分析を行う目的で本研究に着手した。平成6年度の赤血球中ソルビトールに続いて,平成7年度は赤血球中ミオイノシトールの検討を行った。赤血球検体のクロマトグラムには,10分から20分に未知のピークを認めた。このピークがミオイノシトールのピークに重なり影響を与える場合には,検体を2倍希釈することで影響を回避することができ,定量可能となった。本法の同時再現性は,1.62μg/mlのときCV3.80%,5.71μg/mlのときCV1.20%であった。添加回収率は,98.5%と良好であった。健常人の赤血球中ミオイノシトール値91.58±27.45(平均値±SD)nmol/gHbに対し,細小血管合併症を伴わない糖尿病患者では151.71±53.16nmol/gHb,合併症群では253.64±79.10nmol/gHbと有意に高値を示した。合併症群は血糖,HbA1cともに高値であったので,これをマッチさせて検討したが,この場合も合併症群で赤血球中ミオイノシトール値が有意に高値となった。このように赤血球中ミオイノシトール値は糖尿病性合併症の発症,進展の一つの指標となりうることが示唆された。引き続きポリオール代謝に関するデータの集積を行うとともに,まだ解明できていない未知のピークの同定にも力を注ぎたい。
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