研究概要 |
われわれは,特異性が高く簡便な測定法であるHPLC-PAD法を用いて,糖尿病性合併症の発症・進展に関与していると考えられる糖およびポリオール-斉分析を行う目的で本研究に着手した。赤血球に脱イオン水を加え凍結融解して得られた溶血液を,限外濾過器のCentricon-10で除蛋白した。赤血球中ソルビトールおよびミオイノシトールはSugar-PakPbカラム(カラム温度:80°C,移動相:脱イオン水)で分離し,PADで検出した。 健常人(n=11)の赤血球中ソルビトール値17.27±9.12nmol/gHb(Mean±SD)に対し,細小血管合併症を伴わない糖尿病患者(n=16)では31.00±12.29nmol/gHb,合併症群(n=6)では,61.10±25.11nmol/gHbとなった。また,健常人(n=24)の赤血球中ミオイノシトール値91.58±27.45nmol/gHbに対し,細小血管合併症を伴わない糖尿病患者(n=41)では151.71±53.1nmol/gHb,細小血管合併症群(n=14)では,253.64±79.10nmol/gHbとなった。細小血管合併症を伴わない糖尿病患者の赤血球中ミオイノシトール値は健常人よりも有意に高く(p<0.01),細小血管合併症群のミオイノシトール値は細小血管合併症を伴わない糖尿病患者よりも有意に高く,血糖値やHbA_<1c>をマッチさせても有意差を認めた。これらの結果より,赤血球中ソルビトールおよびミオイノシトールの測定は糖尿病性細小血管合併症の一つの指標となりうることが示唆された。
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