研究概要 |
高齢者の末梢皮膚血流量の低下の改善は看護目標の一つであるが、その指標となる具体的な方法をレーザードプラー血流計を用いて探るのがこの研究の目的である。方法は、65才から97才の男女合計49名において、手背中央部の末梢皮膚血流波形をレーザードプラー血流計にて皮膚表面から非侵襲的に測定し、日常生活動作の容易さや入浴前後での変化との関連で比較、検討した。分析はテープに記録した血流波形をAD変換してコンピューターに取り込み、周波数分析等を行うことにより定量的に行った。 記録された波形を定性的に検討したところ、血流状態が悪化していることを反映していると解釈されている"small waves"や"missing"タイプが半数以上を占め,ADL不良群にその傾向がより強かったが、不良群にも血流が豊富なものが認められ、一見した重症度だけでは判断できないことがわかった。周波数分析で定量的に処理した結果では、脈拍に一致する1Hz/sec前後にピークを持つ成分とそれより遅い成分(1)、(2)、(3)が検出された。(1)は0.3Hz/sec前後、(2)は0.1Hz/sec前後、(3)は0.03Hz/sec前後であった。(1)は呼吸に一致すると思われる群、(2)は交感神経による血管運動調節によると思われる群であった。ADL良群と不良群とを定量的に比較すると、良群では脈拍成分に対する遅い成分の割合が高かった。ADL良群10名において入浴前後の比較をすると、入浴後は脈拍成分と遅い成分の両者共に増加傾向がみられた。しかし、中には増加傾向のみられない例もあり、個人差があることがうかがえた。 レーザードプラー血流計を用いた測定を定量的に扱うことにより上記のことが導かれ、高齢者の末梢皮膚血流の状態がより具体的に示されたと考える。
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