研究概要 |
養殖マガキはカキフライや酢ガキなど非常に鮮度が要求される食品である。ところが,むき身ガキは出荷時の細菌数によるチェックや5℃以下という保存温度の規制があるだけで細菌類の繁殖を抑えるための特別な処置はなされていない現状である。そこで,牡蠣殻に抗菌効果が認められることから,安全性の高い牡蠣殻を抗菌剤として実用化に向けて開発することを目的としている。そのためには,自浄作用能が非常に発達しているカキの生理学的特性を利用し,牡蠣殻を単に粉末にするのではなく,殻を形成する粘液を採取し,より吸収されやすい状態で得ようとするものである。重金属を吸収しやすい殻表面を利用しないこと,暖かい地方で牡蠣殻の成育が早いため,牡蠣殻の形成物質の採取量も多いことから生鮮食品の抗菌剤として有用であると考えられる。 平成6年度は,養殖マガキより殻の形成物質を抽出・調製し抗菌剤としての有効性を検討した。その結果,殻の形成物質の有効的採取法を見いだし,すでに報告しているカキ鰓繊毛能を用いた鮮度判定基準により,抗菌効果をもたらす最少量を決定した。平成7年度は,むき身カキの鮮度保持に応用していくことを主眼として,むき身カキの保存温度変化に対する抗菌効果を調べた。10℃以上の保存においては抗菌効果は緩慢になるが,10℃以下においては著しい抗菌効果を示した。市販の牡蠣殻製のカルシウム製剤についても同様な検討を行った。この場合は,添加によりアルカリ性に傾きカキ表面の粘液成分を除去するために抗菌効果が得られたものと推察される。他の生鮮食品に対して応用できうるかを検討した結果,広島菜漬けの塩分量の少ない浅漬けに牡蠣殻の形成物質は抗菌効果を示した。以上の研究において,牡蠣殻形成物質は抗菌効果を示し,生鮮食品の鮮度保持に非常に有効であることを明らかにした。その成果を刊行する予定である。
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