本研究の背景にある学校教育に関する種々の問題については、教育評価関係を含めた文献によって概括した。競争社会の維持・発展のためには、学校が児童生徒の選別や序列化の機能を持つことは否定できないが、その機能に固執し過ぎると教育には歪みが生じてくる。特に、教師の取り組み姿勢を不問にしたままで、児童生徒の能力評価が評定として第三者に利用されていくことは、教師と児童生徒の相互関係で両方の取り組みや結果の資料とする評価本来のあり方から問題である。 評定が学習指導に及ぼす影響調査のプリテスト作成のために、教師への面接や情報交換と大学生対象のこれまでうけてきた教科体育の評価に関する自由記述調査を行った。前者では、潜在的な評価と評定の混乱がみられ、また、即役立つ評定の具体的方法に関する知識入手に関心が強く、教師自身の取り組み姿勢の反映という捉え方が薄かった。後者では、友達との運動能力比較に関心を強調した指導や、技能の到達度評価による評定への不信、さらには生徒コントロールのための内申書利用などから、教科体育嫌いや教師不信に繋がったケースなとがみられた。 双方が納得できる評価のあり方に基づいた評定でない限り、評定は教育への関心を歪めることにしかつながらないという仮説に基づいたプリテスト調査を郵送法により行い、現在回収中である。 来年度は、調査結果の集計整理と、修正を加えた本調査実施をして、競争社会の発展そのものを教育の立場でどう考えるのかという視点から報告書をまとめる予定である。
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