社会の動きに従い教育のあり方も変わってくる。競争社会にはその社会を維持し発展させていく人材育成のための教育が求められていく。これまでの学校教育は、競争社会のひとつのモデルとして機能し、結果的に競争社会の維持発展に「貢献」してきた。その中で、管理主義、いじめ、不登校はじめさまざまな問題が発生してきている。それらの背景に教育システム内部の問題として、競争社会での序列化や選別をしていく道具としての評価や評定に関わるものが考えられる。特に評定はその学習指導の実態が不明のまま、そのわずかな得点の差異で、将来の職業選択までをも支配する道具として第三者に利用されていく。教科体育を含め、学校教育のゆがみはこの評定のあり方にあるといってもよい。 本研究では、教育における評価や評定への意識や行動を修正することで、より望ましい教育が可能ではないかという考え方に基づき、まず「これまでの社会」と「これからの社会」について多様な角度から特徴を集約し、「これからの社会」での教育体育のあり方をまとめた。次に教科体育における評価や評定について、学生と教師の双方に同様な質問項目を用いた調査を実施し、双方の意識や行動のズレを調べた。その結果多くの項目で有意な差がみられた。 今後はこれからの教科体育、さらには学校教育の望ましいあり方に向けて、まずそのズレについての事実や背景の確認、及びズレ修正の作業が不可欠である。特に、これからの教科体育での評価のあり方のこれまで以上の適切な研究と、研究成果をふまえた教師と児童生徒相互理解のための評価そのもの(必要なら評定を含め)の学習指導実践が求められる。そして、それらの作業が、新しい教科再編成論や評定不要論、さらには学校教育再編成論の検討などとともに行われることが望まれる。
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