本研究では、平成6-7年度の継続研究「子どものストレス・マネジメント教育に関する研究」である。現在、子ども達は、家庭、学校、社会など様々な場において種々のストレス状況下におかれており、身体面、行動面、心理面などに影響がでている。たとえば、不登校やいじめに関しては、学校現場、家庭、臨床心理領域などで解決策を探っているものの、増え続ける事例に対処できていないのが現状である。そこで、現在の対応はともかくとして、増え続ける子ども達のストレス関連問題を「予防」の観点から考え、学校におけるストレス・マネジメント教育の適応可能性を探った。 本研究では、2年の研究期間を通して、ストレス・マネジメント教育プログラムの開発とその評価を行った。ストレス・マネジメント教育のプログラムの開発は、試行錯誤の連続であり、平成6年度に行った基礎調査から得た知見とプログラムの内容の組立を一致させることに多くの労力を費やした。研究開始当初は、一連のスクリプトを作成し、複数の人数で劇形式の授業を考えた。その後、学校教諭が一人でも実行可能と思われる授業を考え、自ら実践した。最後に、スウェーデンのメンタル・トレーニングの実践を参考にして、教科目の中に取り入れられるように配慮を行った。たとえば、体育の授業の終了時に、高まった気持ちを落ちつかせたり、疲労の回復のために、リラクセーションを使用する。また、教科授業の始まる前に、授業への集中力を強化するために、少しの間、リラクセーションを用いるなどである。一方、それぞれのプログラムの評価としては、子ども達に授業前後で不安テストを配布し、他教科と比較することで数量的な評価を行った。また、子ども自身による作文や小学校教諭からの意見を参考にして授業の評価を試みた。 不幸にも平成7年1月に、阪神大震災がおこり、多数の被害を負った。震災後、子ども達に起こるかも知れない不安障害の予防のために、ストレス・マネジメント教育が被災地小学校に適用された。平成7年度の研究は、効果の検証よりむしろ実際的な適用に力を注ぎ、災害後にできるストレス・マネジメント教育とそのプログラムの確立が急務であることが認識できた。
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