平成6年度においては、急性低圧低酸素環境下における持久的トレーニングにより脂質代謝の改善が観察され、特に、HDLコレストロールの有意な増加を報告した。本研究の最終年度である平成7年度は、トレーニング高度の違いが脂質代謝に及ぼす影響に焦点を絞り、以下の実験を行った。被検者は一般健康成人男子15人とし、5人ずつ以下の3高度条件に分けてトレーニングを行わせ、トレーニング高度の違いが脂質代謝の及ぼす影響を検討した。すなわち、(1)常圧下(0m)トレーニング群(A群:5人)、(2)2、000m相当高度トレーニング群(B群:5人)及び(3)3、000m相当高度トレーニング群(C群:5人)であった。トレーニング強度は、常圧下で測定した最大酸素摂取量の50%相当強度、運動は自転車エルゴメーター運動で一回当たり30分、トレーニング頻度は週2回、また、期間は5週間とし、総トレーニング回数は10回であった。血液生化学的分析項目は、一般血球値、および脂質代謝関連項目として、HDLコレステロール、HDLの各分画、アポ蛋白A-1、アポA-11、LDL、VLDL、総コレステロール、TG、遊離脂肪酸、リポ蛋白リパーゼ等の測定を行った。採血は、トレーニング開始前及びトレーニング終了後(10回目)の安静時に計2回行った。これらの結果は、現在、試料分析及び検討中であるが、本研究結果を詳細に検討することにより、急性低圧低酸素環境下における持久的トレーニング後に観察される顕著な脂質代謝の改善は、常圧下で観察される脂質代謝改善のメカニズムと急性低圧低酸素環境(ハイポキシア)がもたらす相乗効果であるとの本申請人の仮説を検証したい。
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