研究概要 |
平成6年度は,上記のテーマについて,瀬戸内海沿岸とマレーシア北西岸域において,研究を行なった. 瀬戸内海沿岸では,従来の研究のレビューを行なうとともに,松山で野外調査を行なった.瀬戸内沿岸域の完新世海水準変動については,現在を最高海水準とする説(広島大学中田ほかによる)と約6000年頃前の高海水準期を認める説(兵庫教育大学成瀬ほかによる)があり,これまで決着がついていなかった.今回の松山における調査では後者の説に近い結果を得た.これは,ハイドロアイソスタシ-理論の予想とも良くあう.まだ,試料の分析が途中であるので,来年度には調査地点をひろげるとともに,さらなる検討を行なう予定である. マレーシア北西岸域には,マングローブ林が発達している.その中でも比較的自然状態の保存されているマタンマングローブにおいて採取された掘削試料について,堆積環境の復原を,実験室において行なった.掘削試料はマングローブ表層5m(3地点)のものであり,最近3000年間程度の環境変動と海水準変動を復原することができた. 今回行なった分析は,以下のとおりである. 層相解析. 珪藻をはじめとする微化石分析. 安定同位体分析. 炭素14による年代測定. 上記の調査地域は,現在,地球の温暖化による海水準の上昇が懸念されているが,これまでの分析結果では,顕著な上昇は認められない.なお,今後,試料の分析がすすむにつれ,新たな事実が明らかになるものと期待される.
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