1.前研究(課題番号04808050)によって作成した試作版教科書に対して、学習者・教師にコメントを求めた結果、次のことが分かった。(1)教科書の会話文や練習文例の内容に、一部、改定した方がよいものがあること、(2)表現の用法の記述内容の当否に関してコメントが対立する部分があること、(3)初級教材としてみたときに、提示情報が多すぎる、情報が詳細にわたりすぎている点がある、情報提示に言語学の専門用語などが多すぎて一般の学習者に分かりにくい点があること、(4)表記、教科書としての構成など、形式的な点で問題があること。 そこで、(1)(4)については、研究協力者(山上明)と協議して、現段階までに改定案の6割程度を完成した。(2)については、日本語母語話者(大学生、および、日本語教授法受講者)にアンケートと面接聴き取りを行って、表現の使用の実態を調べている。現在、集計の途中であるが、日本語の使用に関する変化の早さは当初の予想をはるかに上まわっているという感触を得ている。(3)については、研究協力者と協議の最中だが、試作版で提示している情報のかなり多くの部分について、教師用マニュアルには提示するが教科書本体からは削除するという方向を考えている。 2.教師用マニュアルでは、コミュニカティブな日本語教育を目指して、表現の用法と導入方法の解説、強化練習方法の示唆を行う予定である。マニュアルの執筆の準備として、英語学習者・日本語学習者、および教師が、日本語(特に、ある場面でのある表現の使用が与える快・不快)に対して、および、語用論的アプローチによる外国語学習に対して、どのような意識をもっているかを探るために、アンケート、面接調査に加え、研究グループの会誌を通して情報を収集している。
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