研究概要 |
当初マーケティング・チャネルのモデリング技法として構想した「相補的分枝構造」論であったが、研究を進めていく中でそれは独立した理論となり、名称も状態変換システムと付けた。一般に対象システム(ベースシスナムと称している)についてN種類の状態が観察されるならば、N次元の状態変換システムが考えられる。これは今までの理論と同じく、相補的分枝構造を有し、行列演算によって初期状態と結果状態とを結び付けられる性質を持つ。ただ、3次元以上では疑似的な「行列の積の規則」を導入する必要があることがわかった。もっとも変換の結果のみに着目すれば、N次元のシステムは(N-1)個の2次元システムを連結したものと等価であり2次元の標準形についてはまったく従来の議論が成立する。 さらに、ベースシステム上にN個の状態X_1,X_2,…X_nが存在するとき、システム情報量を下記の(1)式で定義すれば、(2)の不等式が成立することが判明した。 S(X_1;X_2;…;X_n)=ΣH(X_i)-H(X_1X_2…X_n) (1) S(X_1;X_2;…;X_n)≧ΣS(X_1;X_2;…;X_n||X_i) (2) ここで、Σはiについて1からnまでの和をとることを意味し、H(X_1X_2…X_n)は事象X_1,X_2,…X_nの同時エントロピーである。また、(2)式の右辺のS (X_1;X_2;…;X_n||X_i)はこの研究で新しく定義した記号であり、縦2重線||の前のX_1;X_2;…;X_nからX_iに該当する項を除いた残を示している。この(3)式をシステム定理と称し、これが示唆する内容は重要と思われるので、実際面における意味について検討段階に入っている。
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