研究概要 |
これまで状態変換としてとらえていたシステム理論を、一般的システムについて観察される不確定状態系の理論として構築し直した。そして、この不確定状態系の性質を代表するシステム情報量に関しても、各状態系の数値分布を基にして求められる組み合わせ分布と同時分布の情報エントロピーの差として定義することによって、新しい展開が期待できるようになった。すなわち、不確定状態群を示す行ベクトルをx,y,z…等で表した時システム情報量は次式で与えられる。 S(x;y;z;…)=H(x・y・z…)-H(xyz…) この特性値の性質に関連して最も重要なことは、その分解である。例えば、3次元不確定状態系のシステム情報量について考えると、3次元に関するS(x;y;z)と3種類の2次元システム情報量S(x;y)、S(y;z)、S(z;x)が存在しており、前者の値と後者の和の値との大小を比較する問題が生じる。この場合、不確定状態群は本研究の重要な基本概念である相補的分枝構造を有することを前提とするが、各分枝に付随する数値の構成内容により、両者の大小は左右されることが判明した。この応用例として、3次元(項目)のデータ表を3種類の2次元(2項目間)の表に変換すると、情報量はどうなるかという問題がある。一般には後者の表により、2項目間の関係が明確となるので、便利なようにみえるが、 S(x;y;z)≧S(x;y)+S(y;z)+S(z;x) なる場合、表示情報量の損失が生じる危険性に着目しなければならない。また、多レコードの中のどの部分に重要な情報が含まれているかという問題にも応用できる可能性を持っている。特に多次元(多項目)のデータ処理に有益な指針を与える理論になると期待される。これはデータマイニングとの関連を生み、相補的分枝構造論は文脈情報の手掛かりを与えるものとなった。
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