研究は、以下の項目に重点をおいて研究を遂行した。 1.装置関数の特徴の把握 装置関数の概念に基づいて、「常用」のガンマ線エネルギー校正法が不適切なことが解明された。装置関数は、従来の適合関数としての光電ピーク波形関数の概念を根本的に覆えした。 2.ガンマ線(光子)エネルギーの再評価 装置関数は、エネルギーを代表する位置が、装置関数に畳み込まれた正規分布のセントロイドであることを明らかにした。この発見は、原子(核)の基本的特性、すなわち励起準位の再評価が必要なことを指摘する、最も重要な成果である。 3.検出装置のシステム校正法の開発 システム校正法を開発した。 4.ベースライン波形を構成するサミング現象の要因の定量的把握 ランダムサミング成分は検出器外の事象(制動放射)および検出器外の事象(コンプトン散乱電子)により発生した。光電ピーク波形近傍におけるランダムサミング波形の実験的関数モデルを提案した。 5.中性子捕獲即発ガンマ線スペクトル中のベースライン波形の形成事象解析 即発ガンマ線分析における光子エネルギーの精密測定のためのベース形状の影響が検討され、ベース形状の定量的把握のための関数モデルが提案された。 本研究は、ICRM(国際放射性核種計量委員会)のβγスペクトロメトリー作業部会(パリ、1995年5月)において、国際共同研究プロジェクト「核分光における物理学的因子に基づくガンマ線波形応答関数」に採択された。
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