Vibrio parahaemolyticusの極毛モーターがNa^+駆動型であることを利用し、その回転に対する特異的阻害剤であるフェナミルを用いると、側毛遺伝子の発現量が増加する事を昨年度は示した。本年度は、Vibrio alginolyticusを用いて、フェナミルが実際に側毛誘導を行うのかを側毛フラジェリン抗体により、蛋白レベルで発現量を調べた。その結果、フェナミルを加えることで、側毛フラジェリンが誘導されることが確かめられ、フェナミルによる誘導効果が立証された。この成果は、国際誌に受理され印刷中である。一方、フェナミルの類似体であるアミロライドでは、べん毛回転を阻害するにもかかわらず発現誘導が起こらない。フェナミルとアミロライドを共存させても側毛の形成が阻害された。また、側毛が構成的に発現されるようになった突然変異株でも、アミロライドによる阻害効果が見られたことから、アミロライドが鞭毛モーター回転だけでなく、側毛形成を阻害することが見つけられた。アミロライドを加えた場合の側毛フラジェリン量は、菌体外での検出量が、相対的に菌体内より少なく、菌体外フラジェリンに対するアミロライド阻害効果が強いらしいことが観察された。これは、アミロライドが菌体内から菌体外への側毛フラジェリンの輸送を阻害している可能性を示唆している。アミロライドが菌体内からのべん毛関連タンパク質の輸送を阻害することにより、菌体内にそれらの量が増え、リプレッサーとして働き側毛遺伝子lafの発現が抑えられるため、あるいは、フラジェリンの輸送に関わるタンパク質の合成を阻害しているのかも知れない。これまでのところ、アミロライドがタンパク質の輸送を阻害するという報告はされていない。この新しい発見については、更に、確認実験を行い、論文にまとめる予定である。
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