研究概要 |
多穴性のゲルの構造とその中に蛋白を入れたときの蛋白の構造を研究するために、中性子小角散乱実験を行った。コントラスト変化法によりガラスのゲルのマッチングポイントは、およそ重水60%の位置であることがわかった。この結果は、計算上のマッチングポイントである重水67%と異なる。これは、ゲル中に外部の溶液と交換できない閉じ込められた軽水が多くあるためと考えられる。ゲルがどのような構造になっているのか解析を行なった。ゲルの構造を決めるモデルとして、各要素が小さな球からなる一次元のガウシアンチェーンを採用した。この場合の散乱強度はI(q)=f^2(q)S_G(q)で与えられる。ここでS_G(q)=2(e^<-x>+x-1)/x^2,x=q^2R_G^2となる。R_Gはガウシアンチェーンの慣性半径である。f(q)=3{sin(qr_0)-qr^0cos(qr_0)}/(qr_0)^3は半径r_0の球の散乱関数である。qは散乱ベクトルの大きさである。この式を用いた解析より、要素となる小球の大きさは、大体直径10Å程度であり、ガウシアンチェーンの慣性半径は100Å程度であることが分かった。この試料はTMOSゾル1mlとリン酸バッファー1.5mlの混合溶液から作成したが、リン酸バッファーの量を3mlにした場合、慣性半径は133Å、6mlにした場合は慣性半径は253Åと大きくなっていくことがわかった。要素となる小球の直径は顕著な変化は見出されなかった。これは、ゲル作成の際の水分量が多ければガウシアンチェーンの長さが長くなることを示している。現在、蛋白をいれた試料の解析も進行中である。
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