研究分担者が維持するトランスジェニックマウス系統(ImmortoMouse、チャールズリバー社)は、その不死化遺伝子の活性を調節できる。すなわち、ImmortoMouseは、H-2Kdのプロモーターを温度感受性SV40 largeT抗原遺伝子に繋いだ遺伝子ベクターを用いて作成されているので、このマウス由来細胞は33℃およびインターフェロン添加条件で増殖促進状態となり39℃で細胞増殖は抑止され分化状態となる。研究代表者は、このImmortoMouseの初期の胎仔(胎令7〜10日)から胚大動脈周辺内臓包葉(AGM)部位を切り出し長期培養とクローン継代により細胞株を樹立した。この不死化遺伝子導入マウスAGM部位由来細胞株はまず上皮様シートを形成し、増殖するとともに一層の細胞シート上に球形の細胞群を作り出し活発な増殖を継続する。すでに種々の血液系細胞のコロニーの出現を形態学的に観察しており、赤血球細胞やマクロファージの幹細胞である骨髄系にくわえてリンパ球系のコロニーも観察している。また、培養細胞の細胞表面マーカーによる細胞フローメトリー解析では、幹細胞マーカーであるSca-1とCD34に陽性、B細胞およびT細胞系譜分化マーカーなどに陽性を示す細胞を検出した。特に、この株細胞集団がSca-1で極めて高い陽性率を示した。γ線照射マウスへこのAGM部位由来細胞株を移植した結果、脾臓に多数の巨核球および未分化細胞のコロニー形成を観察した。H-2ハプロタイプ抗体で調べた結果、これらのコロニーは移植した細胞株由来であった。しかし、移植されている細胞株が未分化すぎるため、γ線照射量の検討にもかかわらず分化能を解析するために必要な長期生存が果たせておらず明確な結果が得られていない。さらに適切な移植実験を検討中である。
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