Gプロテインに共役する膜7回貫通型受容体の合成・移送と膜組み込み経路を解明する目的で、合成部位である核周部と膜上存在部である終末部が離れているニューロンをこれらの解析のモデルとして利用する研究を行った。対象となる受容体として、エピトープ部位の異なる数種の抗体を保有しているGnRH受容体と、カテコールアミンと共存しているため変性実験を併用しやすいエンドセリンA受容体を検索した。 てはじめに、正常ラットやマウスにおけるこれら受容体の脳内分布を明らかにした。エンドセリンA受容体は弓状核などの一部を例外としてほぼカテコールアミンA群ニューロンに完全一致した。GnRH受容体は、中隔・嗅結節近傍・視束前野・視床下部室傍核などに分布していた。室傍核はGnRH(LHRH)神経線維の分布が少なく、従来GnRHニューロンの投射域と考えられていなかったが、GnRH線維と受容体含有ニューロンの接触が観察された。また、この領域ではエピトープ部の異なる抗体により、陽性所見の細胞内局在が異なっていた。 一方、軸索輸送を阻害するコルヒチンの投与で核周部に免疫染色の反応が増強するのは両受容体の場合ともごく一部の領域だけであった。コルヒチンのリガンド側に対する影響も考慮しなければならないため、中和抗体やアゴニスト・アンタゴニストの投与もおこない検討を加えたところ、少なくともこれらの受容体が軸索輸送されているらしい結果が得られた。さらに、ニューロンの細胞体部での受容体の免疫染色は必ずしも膜に局在しないが、これは必ずしも合成過程の受容体を染色しているのではなく、むしろ、分解されつつある受容体を観察しているように考えられる。室傍核におけるGnRH受容体の所見もこれを裏づけている。これらの事実を電顕レベルでも確かめ、来年度の計画(Brefeldin投与実験、カテコールアミン神経変性実験)へと発展させたい。
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