研究概要 |
Balb/c mouse の新生仔脳を取り出し、ホモジネートしてから培養フラスコで14日間培養することにより、アストログリア、オリゴデンドロサイト、ミクログリアの三種類のグリア細胞は増殖した。振盪培養(100rpm,3時間)でミクログリアのみを回収し、電気生理学的研究に供する標本を作製する方法を確立することができた。この細胞にpatch-clamp法を適用して、電気生理学的解析を行った。あらかじめ、生理活性のある神経ペプチドあるいは、免疫調節性物質を検索するために、末梢系の免疫担当細胞の1つであるマクロファージの貪食能に及ぼす種々の物質の作用を調べたところ、コルチコスチン(デイフェンシンNP-3A)、ダイノルフィンAとペ-キャップ38に強力な修飾作用を見い出した。コルチコスチンはマクロファージ貪食能を抑制しダイノルフィンAは促進した。ペ-キャップ38でも同様に促進した。この内、ペ-キャップ38についてミクログリアの電気生理学的作用を調べたところ、ホールセルクランプ下で、外向き電流を発生することが明かとなった。外液のカリウムイオンを2、5、20mMに調製した溶液で逆転電位が‐110、‐87、‐51mVであったために、この外向き電流は、カリウムイオン浸透性増大によるものであることが明かとなった。マクロファージにおいて、ペ-キャップ類似物質の作用はすでに分析しており、電気生理学的にも同様の現象が生ずるのか今後明かにされる。ミクログリアの貪食能に対する修飾物質の作用について、報告がなく、本研究の発展により脳内免疫担当細胞ミクログリアの活性調節機構が明かとなるであろう。
|