凍結切片をもちいた免疫組織化学の手法により、鶏胚網膜には発生の早い時期から細胞周期制御因子のcdk5と呼ばれるサイクリン依存性キナーゼが存在することを見いだした。抗cdk5抗体により、全ての網膜神経層を一様に強く染め出すことができた。またサイクリンD1についても同様に調べたところ、抗サイクリンD1抗体によってわずかに網膜凍結切片が染まるのを観察した。どの種類の神経細胞に抗原が存在するかを調べるため、網膜より分散初代培養した視細胞および他の多極性の神経細胞、また初代培養網膜片から伸展してくる親神経についてそれぞれ抗cdk5および抗サイクリンD1抗体によって各々の神経細胞を染め出した。cdk5については全ての種類の神経細胞が染まり出され、また視神経軸索および成長円錐も染まることを見いだした。cdk5はニューロフィラメントやタウをリン酸化することが最近明らかにされており、ここで得られた培養神経細胞での染色パターンと合致する。サイクリンD1抗体ではcdk5と異なり全体のうち10〜20%の神経細胞が強く染まり、視細胞や視神経軸索は弱くしか染まらなかった。また神経細胞以外には存在が認められなかった。サイクリンD1はcdk2、4と複合体を形成すると考えられており、これらのキナーゼとの共発現を検討中である。またどの神経細胞腫がサイクリンD1を含むのか、各神経層の微量定量によって明らかにするつもりである。
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