研究概要 |
Subplate cellの選択的破壊を目的として生後2日の仔ネコ大脳皮質視覚野に10mg/mlのカイニン酸溶液を1μlずつ2〜4ヶ所に注入した。生後6週目と4ヶ月〜5ヶ月目にカイニン酸注入点近傍から電気生理学的記録を行ったが、正常な受容野特性をもつニューロンはほとんど記録できなかった。カイニン酸注入半球の切片で、β-tublin,GFAP,GAP-43シナプス小包特異抗原等に対する抗体を用いた免疫組織学的検討を行い、対象半球と比較した。生後6週目の動物ではカイニン酸注入半球でGAP-43の免疫染色性が著しく低下していたが、生後数カ月経過したグループでは、左右の大脳半球で有意な差は認められなかった。 胎生42日目に子宮内の胎児の後頭葉にカイニン酸を注入し、subplate cellを破壊する試みを行った。カイニン酸注入を受けた胎児は、その体重こそ正常範囲下限にあったが、大脳皮質が全般に著しく萎縮しており、正常に出産させるには至らなかった。 神経細胞毒によるsubplate cellの選択的破壊とその効果については、すでに米国のShatzらによって報告されているが、これらの文献に述べられているカイニン酸の濃度ではその特異性に極めて問題があることがわかった。注入の時・空間的特異性については当初の計画通り、蛍光ビーズをカイニン酸溶液に加える等の方法によって期待できる成果が得られた。今後更にカイニン酸の濃度とその注入方法について検討する必要がある。 発達薬理学的処置を加えた動物の視覚野ではその処置の非特異的な影響により、しばしば単一ニューロン記録が困難な場合が多い。今年度検討した複合神経活動記録とそのクラスター解析はこのような場合の視覚野の神経活動の評価に極めて有用であり、これからの研究に威力を発揮するものと期待される。
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