ハチは、規則正しく整然と並んだ6角形の巣室を持つ巣を建築する。ハチがこのような形状を作ることができるのは、対象物に柔らかく触れ、傷つけずにその形状を感知し、作ろうとしている巣の部位や状況に応じて2本の触角の動作を変えるといった能力によるところが大きい。本研究は、この点に注目し、ハチの触角を模擬した能動的センサの開発、および検討、評価を行うことを目的としている。 現在までにアシナガバチ(セグロアシナガバチ)、ミツバチ(セイヨウミツバチ)、スズメバチ(キイロスズメバチ)を対象に、巣作り行動の観察を行い、同時に多くの映像の収録を行った。観察は実際にハチが巣を作っている野外の営巣状態、強制的に巣を作らせた飼育箱内の営巣状態に対して行った。特にアシナガバチとスズメバチについては、巣作りにおける触角の動きを鮮明にとらえることができ、非常に貴重な映像の収集ができた。 また、触角を模擬したセンサーを備えた造形システムの試作を行い、ハチの造形法をもとに、基礎的な形状の試作実験を行った。 これら観察結果や映像の分析、造形システムによる形状の試作を通じて、どのように触角を使って形状を作り出しているのか、触角の動作や機能の検討、センシング動作が形状の成形に及ばす影響についての検討を行った。 ハチは種ごとに、巣の形状や材料、建築方法が様々であるが、十分な映像データが得られているアシナガバチとスズメバチについて、触角の動作や機能に注目した分析を行い、ある程度、共通的な見解を得ることができた。ハチなどの昆虫類は走性と呼ばれる性質を備えており、この性質がセンシング動作に大きな影響を与え、しいては作られる巣の形状の決定にも関わっているであろうことがわかった。
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