平成6年度は次の研究を行なった。第一に、予備的な研究として日本企業の知的財産権組織の現状を事例研究として分析した。ここでは日本の電機メーカー、精密機械メーカー等の企業がその内部の知的財産権担当部門をどのような原理で組織化しているかを事例研究で検討した。さらに知的財産権の交渉と訴訟に対応するために企業がどのような組織化を行なっているかを検討した。さらにこの管理手法としてのプロジェクト・マネジメントの適用可能性を論じた。これらの研究は下記の著作『日本企業の知的財産権組織の現場と課題』に記載されている。 第二に、理論研究として、企業価値と知的財産権の経済価値の関係を定式化した。知的財産権は知的財産権等の無形資産は企業価値を構成する重要な資本である。知的財産権(A)と一般の物的資本(K)を区別して知的財産権(A)の価値(VA)の間の関係を明らかにした。ここで企業価値(V)と資本の比率はq-比率で示されることを示した。第三に、この定式化を利用して、知的財産権が企業業績に与える影響を実際に推定した。これは医薬品企業に応用した。上記の理論の適用可能性が確認された。この第二と第三の点は、下記発表論文「製薬企業における研究開発の効率性-企業価値、会計的な利益、特許による評価」で報告した。 第四に、知的財産権訴訟に関する企業が実際にどのような意思決定を行なっているかを調べるために、期待効用理論、デシジョン理論に依拠したアンケート調査を行なった。これは分析途中で、1995年5月に発表した後、学術論文として作成する予定である。
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