当研究の第1の課題は、インドのラオ政権が1991-92年度から1993-94年度までに実施した経済自由化政策と財政政策の特徴と経済・財政効果を評価することである。第2は、ラオ政権が1994-95年度以降に目指す経済改革と税制改革の経済・財政効果を評価することである。2年間の当研究の成果として、次のことが明らかになった。 1.経済改革は、計画経済から構造調整プログラムへの経済開発政策の転換により、持続的経済成長を目指す画期的な構造改革であった。産業ライセンス制廃止と公共部門留保分野の民間部門への開放、株式の外国資本所有の自動認可、輸入ライセンス制の廃止、ルピー変動相場制への移行、規制利子構造の自由化などが、実行された。この構造改革の結果、1994-95年度より工業資産の回復と経済成長率の上昇基調が明確になった。 2.経済改革では、中央政府財政赤字GDP比率削減とインフレ率抑制の目標が未達成である。これら目標達成と経済成長促進のため必要なインフラ整備および農業・農村開発への公共投資増加との調整が、第1の経済政策課題となる。インフレの影響を受けるが、経済発展の成果が浸透しにくい農村の貧困軽減が、第2の政策課題となる。 3.1992-93年度から1995-96年度の税制改革では、所得税および法人税の税率引下げと税率構造のフラット化、輸入税の大幅な税率引下げと合理化、消費税における修正付加価値税の適用拡張など、独立以来の最も包括的改革が実行された。その結果、関税の税収減に対して法人税と所得税の税収が増加し、中央政府総税収比率が20%から30パーセントに上昇し、間接税に大きく依存していた税構造における直接税収の増加という顕著な変化が生じている。 4.税制改革では、中央消費税と州売上税の付加価値税への移行と税務行政改革が残された主要な課題である。そして、州売上税の改革には、中央政府のイニシアティブによる州政府との政策調和が不可欠となっている。
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