染色体末端テロメアDNAは、細胞増殖に伴うDNA複製により末端より短小化することが知られている。その短小化と拮抗してテロメア長を維持する酵素がテロメレースである。テロメレースは、繰り返し配列からなるテロメアDNAの3′末端に同じ繰り返し配列を付加する機能を持ち、生殖細胞や腫瘍細胞など不死化細胞に発現が高く、有限の分裂可能回数をもつ体細胞では発現が弱いとされている。しかし、腫瘍細胞においてすら、テロメレース活性は弱いためにこれまでその活性を直接的に検討することは困難であった。今年度の本研究により、我々はPCRを用いた新しいテロメレース活性の検出方法を開発した。それによれば、約10^3個の細胞に由来するわずかな量のテロメレース活性を検出することが可能であることが明らかになった。本法を種々の細胞株および継代を重ねたヒト胎児由来の繊維芽細胞に応用し、それらの細胞におけるテロメレース活性を半定量的に比較した。その結果、ヒト初代線維芽細胞では、のべ継代数が30代、あるいは60代のものいずれでも活性は認められなかった。一方、U937細胞株を初めとする多くのヒト腫瘍由来の細胞株では、強い活性を検出することができた。以上の事実は、少なくともin vitroにおける細胞の老化に関してテロメレースが重大な関与をしていることを示している。今後、さらに多くの細胞株や初代細胞について検討を重ねたい。
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