紙の風邪引き現象は、水に対する挙動が斑点状に不均一になることである。その斑点部では、親水性が特異的に高くなっており、膠と明礬の混合液であるド-サ塗布を繰り返してもなかなか、水滲性を克服できない。風邪引き箇所は、通常光下では不可視であり、ド-サ塗布後乾燥して水を塗布した時に初めて、斑点状に水滲箇所が観察出来る状態となる。 生物的な要因:風邪引き箇所と健全部の化学分析により比較したところ、アミノ酸の一部に有為な差が認められた試料と認められなかった試料が混在している。 繊維表面の物理的変化:X線マイクロアナライザーにより塗布した硫酸銅の挙動は、風邪引き箇所に集中している。 試料の示す分析結果が、同一でないので、単一な理由で風邪引き現象が生起されるのではないことが、予想される。 風邪引き現象の発現率調査は、文化財修復工房、日本画家の協力を得て行っているが、必ずしも湿度環境だけが原因とは考えられない状況である。
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