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1995 年度 研究成果報告書概要

古代の金製および銀製金工品の材質と製作技法に関する材料科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 06834014
研究種目

一般研究(C)

配分区分補助金
研究分野 文化財科学
研究機関奈良国立文化財研究所

研究代表者

村上 隆  奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究官 (00192774)

研究分担者 新山 栄  東京芸術大学, 美術学部, 教授 (30015242)
研究期間 (年度) 1994 – 1995
キーワード古代金工 / 金 / 銀 / 蛍光X線分析 / 走査型電子顕微鏡 / 接合 / 銀ろう
研究概要

金はその独特の輝きとさびにくい性質のため、あらゆる古代文明において、装身具などに加工され重用されてきた。わが国でも古代から金は重要視されていたが、古墳時代までは資源の開発までおこなうにはいたらず、実際の製品としては表面だけを金で覆った鍍金によるものがほとんどであった。わが国における発掘調査によって出土する金製品がきわめて希なのはこのためである。しかし、数少ない金製金工品の製作には当時の高度な金工技術が駆使されている。本研究では、発掘調査で出土した金製および銀製の金工品の材質を分析するとともに、製作技術の詳細に対しても材料科学的な見地から調査し、古代の金工技術を解明することを目的とした。調査で用いた手法は、主に非破壊的手法による蛍光X線分析と走査型電子顕微鏡である。以下、本研究において得られた知見について簡単にまとめる。わが国で出土した古代金製品の材質は、概ね17〜23金の金組成をとる。その他の元素のほとんどは銀であり、銅の含有量が極めて低いのが特徴である。そして、製品の用途に合わせて材質を選択することもおこなわれていたと考えてよいだろう。一方、古代の銀製品は銀の濃度が低いものでも92%前後と純度が高く、ほぼ純銀に近いものも多いのが特徴である。銀には不純物として主に銅が含まれている。また、土中で腐食が進んでいるものから臭素が検出され、保存処理の必要な遺物もみかけられた。製作技術の点では、叩いて延ばした薄板を接合して立体に仕上げているものがほとんどであることが特徴である。この接合には、蝋付け法がすでに用いられており、当時の技術レベルの高さを窺える。古代における金製および銀製金工品の製作には、現代に伝わる伝統的金工技法の基本のすべてがすでに登場していたと考えられる。本研究を通して、限られた材料と道具のみを用いて、経験的に体得された古代技術の水準の高さを再認識することができた。

  • 研究成果

    (12件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (12件)

  • [文献書誌] 村上 隆: "島根県安来市大原一号横穴出土の耳環の材質と構造" 臼コクリ遺跡・大原遺跡. 282-283 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 村上 隆: "ミクロな眼で探るわが国金工技術の世界" 佛教藝術. 213. 117-128 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 村上 隆: "古代の黄金の世界" 田中〓・佐原真編『発掘を科学する』. 208-211 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 村上 隆: "古代金工における色彩-古代の色は復元可能か-" 国立歴史民俗博物館研究報告. 第62集. 11-25 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 村上 隆: "島根県出雲市上塩冶10号横穴墓出土金糸の材質と製作技法について" 上塩冶横穴墓群第20・21支群. 83-84 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 村上 隆: "古代金工における金属接合技術-銀鑞による「鑞接」技法を中心に-" 「文化財論叢II」奈良国立文化財研究所創立40周年記念論集. 969-987 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Ryu NURAKAMI: "Ancient Gold World" Scientific Approach to Archaeology. 208-211 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Ryu MURAKAMI: "Materials and Structure of earring excavated in Ohara, Shimane" ARS BUDDHICA. vol.213. 117-128 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Ryu MURAKAMI: "The Realm of Metalworks Technique in Japan Researched from Microscopic Viewpoint" Usu-Kokuri, Ohara site. 282-283 (1994)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Ryu MURAKAMI: "Colors in Ancient Metalwork-Is It Possible to Restore the Ancient Colors?" Bulletin of the National Museum of Japanese History. vol.62. 11-25 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Ryu MURAKAMI: "Materials and Fabricating Technique of Gold Thread Excavated in Kamienna, Shimane" Kamienna. 20, 21. 83-84 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Ryu MURAKAMI: "Ancient Metal Joining Techniques : focusing on silver brazing" ADVANCES IN THE STUDY OF CULTURAL PROPERTIES, In Commemoration of the 40^<th> Anniversary of the Nara National Cultural Pronerties Research Institute 1952-1992. 969-987 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1999-12-08  

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