1、非破壊分析法による材質同定の可能性について検討したところ、アルカリ珪酸塩ガラスの場合は、アルカリの溶出量が大きく、また鉛珪酸塩ガラスの場合は、二次的物質が再結晶することが多く、風化層を除去しないと材質の判定は不可能である事が明らかとなった。 2、古代ガラスの材質は、3世紀後半と6世紀後半、7世紀末、11〜12世紀項に大きく変化する。弥生時代に全盛をきわめたカリガラスは化学組成同位体比(鉛)から判定すると、中国で製造されたものが日本で流通したことは明らかである。 3、古墳時代に多様な色調をもたらしたガラスは、アルミ含有量が多いソーダ石灰ガラス(Na_2O-Al_2O_3-CaO-SiO_2)系で、青紺色ソーダ石灰ガラス(Na_2O-CaO-SiO_2系)とは材質がまったく異なることが明らかとなった。これは、インドに起源をもつソーダ石灰ガラスと、西アジア、地中海周辺に起源を持つソーダ石灰ガラスが3世紀後半ころの日本に伝えられたことは明らかで、今後、日本に伝えられたガラスの製造地について検討する事が重要となった。
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